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2019/06/22

相続した預金を1人で一部引き出す方法が法改正で認められました(遺産分割前の相続預金の一部払戻し制度)

今日は、法改正により、2019年7月1日(月)にスタートする便利な新制度のお知らせです。

新制度の内容ですが、
亡くなった人(被相続人)の預貯金について、
遺産分割協議が成立していなくても、
家庭裁判所の判断を得なくても、
相続人の1人がその一部の払戻しを受けられるようになりました。
これまで、預金の名義人が亡くなった後は、
相続人間で遺産分割協議が成立したり、
家庭裁判所の判断を得るまでは、
預金の払戻しができませんでした。

そのため、葬儀費用、被相続人の債務の支払いや生活費など、
被相続人の死後まもなく支払う必要のある費用を、
相続人は立替払いせざるを得ない事態が多く発生していました。

これは、次の2つが大きな原因でした。

1つ目は、
相続人間の遺産分割争いに金融機関が巻き込まれて
預金の払戻しを二重にしなければならなくなる事態を回避するため、
遺産分割協議が成立したり、家庭裁判所の判断を得るまでは、
金融機関としては預金の払戻しに応じないという金融機関の実務上の取扱いです。

2つ目は、
「被相続人の預貯金は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割承継されることはなく、
遺産分割の対象となると解釈することが相当である。」という内容の
最高裁判例(平成28年12月19日最高裁大法廷決定)です。

金融機関としても、相続人間の争いに巻き込まれて損失を被るわけにはいきませんし、
最高裁の判断も「預金も他の遺産と合わせて、相続人同士で話し合って公平に分けれるようにしましょう。」という内容で、
これ自体、不当な判断というわけではありませんが、
一方で、相続人全員の話し合いがまとまるまで、上記のような不便が生じていたことも事実です。

それが、今回の法改正によって、これが改善します。
法改正によってできた新制度の内容ですが、
各相続人は、相続預金を、口座ごと(定期預金の場合は明細ごと)に
以下の計算式で求められる金額については、
遺産分割協議が成立していなくても、
家庭裁判所の判断を得なくても、
金融機関から単独で払戻しを受けることができるようになりました。

ただし、払戻し金額には上限がありまして、
同一の金融機関(同一の金融機関の複数の支店に相続預金の口座がある場合は、その全支店)からの払戻しは、
150万円が上限になります。

(単独で払戻しができる金額の計算式)
相続開始時の預金額(口座・明細ごとの金額)×1/3×払戻しを求める相続人の法定相続分

具体例を1つ挙げて計算してみます。
相続人が、被相続人の妻とその間の子2名(長男、長女)で、
相続開始の預金額が1口座の普通預金2400万円であった場合。
長女が単独で払戻しを受けることができる金額は、以下のとおりです。
2400万円×1/3×1/4=200万円(上限金額150万円超)
→したがって、150万円が払い戻されます。

払戻しを受けた資金の使途については、制限はありませんが、
一般的には、葬儀費用、被相続人の債務の支払いや生活費など、
被相続人の死後まもなく支払う必要のある費用に充てられることが多くなるのではないでしょうか。

また、この払戻し手続には、以下の書類が必要です。
①被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの連続したもの全て)
②相続人全員の戸籍謄本
③払戻しを求める相続人の印鑑証明書
④その他、該当の金融機関が求める書類


なお、この一部支払いを受けた相続預金については、
「当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす」とされ、
後日行われる遺産分割協議で話し合った結果、
その相続人が、一部支払いを受けた相続預金を取得することに決めた
ものと同じ効果(みなす)にします。とされています。

しかしながら、「最終的に」、「公平に」遺産を分けるには、
結局、遺産分割協議を行う必要があることは今後も変わりません。

立て替えた葬儀費用、被相続人の債務の支払いのために使った金銭や、
相続財産を管理するのにかかった費用を誰が負担するのか、
預金以外の財産を誰が取得するのかについての話し合い(遺産分割協議)は、
相続発生から時間が経てば経つほど、
費用の領収書などの資料を紛失したり、当事者の意欲が失われたり、
当事者が認知症になってしまったり、亡くなってしまったり等、
困難になっていくことが一般的です。

相続が起こると、様々な手続をする必要があり、相当慌ただしくなりますが、
弊所などの専門家を利用しながら、速やかに、そして円満に手続を行うことが重要です。


弊所では、本制度に関するご質問、その他相続手続全般に関するご相談も無料で承っております。


いかがでしたでしょうか?
この記事を読んでくださる皆様のお役に立てたならば幸いです。

今回も最後まで読んでいただき、有難うございました。


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司法書士 山内勇輝

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