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2019/09/28

機械設備や在庫などの動産に対する担保権を創設する動きが出てきました

おはようございます!

弊所の取扱い業務でもある「動産譲渡登記」について
先日、日本経済新聞に気になる記事が掲載されました。

日本経済新聞電子版記事(9月6日付)
(担保権を動産にも設定 法務省、機械・在庫対象に)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49481830V00C19A9MM8000/


動産を担保として取得する方法として、
不動産に対する抵当権、根抵当権、質権などのように
法律上認められた新たな担保権(物権)を創設しよう
と検討しているとのことです。

現在、融資の担保として動産を差し入れる方法として一般的なものとして、
「質権」や「譲渡担保」という方法があります。

まずは、質権ですが
これは質屋さんをイメージしてもらうと分かりやすいかもしれません。
融資を受ける人が所有するモノ(動産)を質屋に引き渡す代わりに融資を受け、
もし返済がされない場合には、そのモノ(動産)を売却して返済を受けたり、
そのモノ(動産)の所有権を質屋がもらい受ける(いわゆる質流れ)
というような方法です。

しかしながら、質屋で取り扱うような物品であればまだしも
事業者の保有する機械設備や大量の在庫となると異なる手法が必要です。
なぜなら、これらのモノ(動産)は普段の事業経営に必要なモノですので、
誰かに引き渡してしまうと事業経営ができなくなるからです。

そんなときには
譲渡担保という方法を取ることになります。
譲渡担保というのは、事業者が保有する機械設備や在庫などの所有権だけを
融資を行う金融機関に移す方法のことをいいます。
この譲渡担保を使えば、
融資を受けた後も、事業者は機械設備等を手元に置いて使い続けることができますし、
万が一返済が滞ったときには、
融資を行う金融機関も、機械設備等を売却して返済を受けることができます。

ただこの場合、担保に差し入れた事実が第三者から分かりにくい点が問題で、
ある機械設備を担保に融資したはずが
別の金融機関がすでにその機械を担保に融資していて
2つの金融機関同士で譲渡担保が成立した時期をめぐって争うといった
事態が生じることを恐れ、融資に二の足を踏むことが想定されたため、
現行法「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」において
機械設備などの動産の譲渡担保について登記をすることで、
担保に差し入れた事実やその時期を第三者に明確に知らしめることを可能にしています。

この動産の譲渡担保を活用した融資方法(ABL)は
2000年代から利用は増加してきましたが、近年は件数が2年連続で減少し
利用が伸び悩んでいる状況にあります。
金融緩和でカネ余りが続き、
金融機関が機械や在庫をあえて担保にする必要性が薄れていたり
現行の動産譲渡登記制度のもとでは
不動産抵当権のように第1、第2順位といった担保の優先順位のルールが不明確だったり
登記制度以外の方法をとる優先者が存在する可能性についても注意か必要だったりと
使いづらい点が普及を妨げているともいわれています。

一方で、将来、景気が悪化するなどして融資が受けにくい市況となれば、
ふたたび企業がABLを利用するニーズもふくらむことが予想されます。

そのため、法務省は今年3月に研究会を立ち上げ、
動産を対象にした担保権を法制化する議論を始めています。
法務省は早ければ2020年秋に民法などの改正を法制審議会に諮問する見通しです。
法務省の研究会では、機械や在庫などを対象とした担保権を法制化すると同時に
新たに登記制度を設ける案などを検討しているようです。

在庫など担保の対象となるものが入れ替わり、量も変動するモノを
担保の対象としてどのように特定して登記を可能とする仕組みとするのか
担保に差し入れた事業者が倒産した時の新たな担保権の取り扱いなども含めて
検討されるようです。

金融機関のご担当者よりご相談いただくことも多い
動産の譲渡担保に関する仕組みについては、
個人的には、以下の仕組みを含んだ制度としてくれることを期待したいですね。
1、一定の動産の担保取得については、その優先順位の決定基準を登記に一本化
2、工場抵当法には存在するような不動産担保と連動させる仕組み
3、大量の動産を一括して担保権設定できる仕組み


良ければ、動産譲渡について書いた関連記事もご覧ください。
「2019.3.9付-動産譲渡登記に関する証明書について」


今回も最後まで読んでいただき、有難うございました。


へいわ法務司法書士事務所
司法書士 山内勇輝

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