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2020/04/25

遺言書と異なる内容で遺産分割協議はできるのか?(その3)

おはようございます!

今回はタイトルのとおり、
遺言書と異なる内容の遺産分割についての記事の続きです!

少し間が開いてしまったので、
これまでの内容を忘れてしまった!という人は
3月14日の記事
『遺言書と異なる内容で遺産分割協議はできるのか?(その1)』
3月28日の記事
『遺言書と異なる内容で遺産分割協議はできるのか?(その2)』
を読んで、ぜひ思い出してみてくださいね。

さて、今回のテーマは
遺言と異なる内容で遺産分割をした場合
「税務上の取扱い」はどのようになるのか?
についてです!


【前提となる考え方と関係する税金について】

税金の話をする前に
遺言と異なる内容の遺産分割をしたときの法的効果について
考えてみたいと思います。

遺言が書かれているケースにおいて
遺言者が亡くなると
「遺言者の死亡のときに」遺言の効力が発生することになります。

そして
遺言の効力によって
一度、どの相続人がどの遺産を取得するのかが決まったものを
もう一度、相続人全員で話し合うことで
どの相続人がどの遺産を取得するのかを決め直した(変更した)。
つまり、
相続人の間で
一度取得した遺産を贈与や交換をすることで
遺言と異なる内容での遺産取得を実現したという風に考えられます。(※)

(※)
さらに踏み込んだ話をすると
相続人間で「遺産共有状態」であったのか
あるいは「物権共有状態」であったのかによって
考え方が異なることになるのですが、
今回はそこまで立ち入らずに説明をさせていただきます。


話を戻しまして
まず、遺産を「一度取得して」
その遺産を「もう一度贈与・交換する」ということになると

税務上の取扱いは、
「一度取得した」ことについては、
「相続税」がかかり、
「もう一度贈与・交換する」ことについては、
「贈与税」や「所得税(交換した遺産についての譲渡益)」がかかる。
そんな風になってしまいそうだと思いませんか?

と、前提としてのお話はここまでです。
以降、税務上の取扱いについて書いていきます。


【税務上の取扱い(タックスアンサー、質疑応答事例)】

早速ですが、
これまでの話を踏まえて
実際の税務上の取扱いはどのようになるのでしょうか?

結論としては
遺言と異なる内容で遺産分割をした場合であっても
「遺産分割協議の内容に基づいた」遺産の取得について
「相続税がかかるだけ」ということになります。

国税庁のHPにおいても
そうした取扱いについての記載がありますので
2つご紹介させていただきます。

『タックスアンサーNo.4176』
遺言書の内容と異なる遺産分割をした場合の相続税と贈与税
[平成31年4月1日現在法令等]
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4176.htm

特定の相続人に全部の遺産を与える旨の遺言書がある場合に、
相続人全員で遺言書の内容と異なった遺産分割をしたときには、
受遺者である相続人が遺贈を事実上放棄し、
共同相続人間で遺産分割が行われたとみるのが相当です。
したがって、各人の相続税の課税価格は、
相続人全員で行われた分割協議の内容によることとなります。
なお、受遺者である相続人から他の相続人に対して
贈与があったものとして贈与税が課されることにはなりません。

『国税庁質疑応答事例』
遺言書の内容と異なる遺産の分割と贈与税
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/14/03.htm

(照会要旨)
被相続人甲は、
全遺産を丙(三男)に与える旨(包括遺贈)の
公正証書による遺言書を残していましたが、
相続人全員で遺言書の内容と異なる遺産の分割協議を行い、
その遺産は、乙(甲の妻)が1/2、丙が1/2それぞれ取得しました。
この場合、贈与税の課税関係は生じないものと解してよろしいですか。

(回答要旨)
相続人全員の協議で
遺言書の内容と異なる遺産の分割をしたということは
(仮に放棄の手続がされていなくても)、
包括受遺者である丙が包括遺贈を事実上放棄し
(この場合、丙は相続人としての権利・義務は有しています。)、
共同相続人間で遺産分割が行われたとみて差し支えありません。
したがって、
照会の場合には、原則として贈与税の課税は生じないことになります。


【税務上の取扱い(注意点)】

先ほどのお話では
遺言と異なる内容の遺産分割をしたとしても
「相続税」だけがかかり
「贈与税」や「所得税」がかかることはないということでした。

しかしながら、
これは遺言によって遺産をもらうことになった人が
「相続人」であるケースのお話だということには注意が必要です!

遺言によって遺産をもらうことになった人が
「相続人でない人」のケースでは、
遺言によって「一度取得した」遺産については、
「相続税」がかかり、
遺産分割によって「もう一度贈与・交換した」と考えられる部分については、
「贈与税」や「所得税」が課税されてしまう可能性があります。

少しでも疑問が残るようなケースでは
安易に自己判断をせず
相続分野を得意とする税理士や司法書士に相談のうえ
遺言と異なる遺産分割を実行することをおすすめいたします。


今回のお話はここまでです。
続きは、また次回以降にさせていただきますね。

今回も最後まで読んでいただき、有難うございました。


へいわ法務司法書士事務所
司法書士 山内勇輝

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