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2019/06/29

遺産分割前に相続人の1人が預貯金を勝手に引き出した場合はどうなる?

おはようございます!

最近はテレビ、新聞、雑誌など各種メディアで、
相続や認知症の問題について取り上げられることが多くなってきました。

その影響なのか、
これまで、これらの問題に実際に直面してからご相談に来られる方が多かった印象ですが、
最近では、問題が発生する前にご相談に来られる方が徐々に増えてきているように感じます。

多くの方々が、これらの問題の深刻さや事前対策の重要性を認識してくれていることは
非常に良いことだと思いますし、
弊所でも引き続き、様々な情報提供をさせていただきます。


さて、今日も前週に続いて、
法改正により、2019年7月1日(月)にスタートする相続に関する新制度のお知らせです。


遺産分割に関して、こんなご質問をよくいただきます。

「親の死後、同居していた相続人が、
親のキャッシュカードと暗証番号を利用して、親名義の預貯金を勝手に引き出していますが、
これから遺産分割を行う際、当然にその相続人の取り分は少なくなるんですよね?」


法改正前の家庭裁判所の実務では、
遺産分割の対象となる財産とは、
「相続開始時に存在し」かつ「遺産分割時に存在する」財産とされていたため、
上記の質問のケースのように、
相続開始から遺産分割までに処分された財産は、相続人全員の合意がない限り、
遺産分割の対象ではないとされていました。
そのため、相続人は、処分した相続人に対して、
遺産分割とは別個に、不法行為又は不当利得に基づく取得財産の返還請求を行う必要がありましたが、
必ずしもこれらの請求が可能とは限らず、
結果的に、勝手に預金を引き出した相続人が得をしてしまう。ということがありました。

例えば、
被相続人Aの相続人は、その子であるB、Cのみ、
遺産は、預貯金1000万円(X銀行に500万円、Y銀行に500万円)であるケース。
Aの死後、同居していたBは勝手にX銀行から500万円を引き出しました。
この場合、Bが同意しない限り、
遺産分割協議の対象財産は、Y銀行の500万円のみとなり、
遺産分割協議においては、Bが250万円、Cが250万円取得することとなります。
Cは別途、Bに対して、Bが取得したX銀行の500万円のうち、
250万円を返還するよう請求することとなりますが、
Bが既に返還すべき250万円を持っていないような場合には、
Cは結果的に損をしてしまうということになってしまいます。

また、先週の記事にも書かせていただいた「遺産分割前の相続預金の一部払戻し制度」では、
相続人がこの制度を利用して払戻しを受けた預貯金は、
遺産の一部の分割によって取得したものとみなされることとなりましたので、
上記の質問のケースのように正規の手続を経ずに払戻しを受けた場合であっても、
同様に取り扱うことが公平であるという考え方もありました。

そうした経緯から今回の法改正がされ、今後は次のような取り扱いとなります。

相続開始時に被相続人の遺産に属する財産が、遺産の分割前に処分されており、
相続人全員の同意がある場合、
(なお、相続人の一人又は数人が財産を処分した場合は、同人の同意を得ることを要しない。)
遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合についても、
公平の理念から、遺産分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。
こととなりました。

つまり、勝手に引き出された預貯金(遺産から漏れ出した財産)については、
引き出した相続人が同意しなくても、
一旦遺産とみなして(遺産に含めて)、
改めて、引き出した相続人がその預貯金を取得したという遺産分割を行うことで、
合理的かつ公平な解決ができる可能性が高まりました。

ただし、注意すべき点があります。
勝手に処分をした相続人が明らかに特定されているときは、その相続人の同意は不要ですが、
その相続人がその事実を否定していて、証拠等もなく明らかに特定ができない場合は、
この取り扱いはできないこととなります。

実際の相続の現場では、こういったことも起こりえます。

できる限り相続人間で公平な遺産分割ができるように、今回の法改正があったわけですが、
実際に公平な遺産分割を実現するためには、
不正行為が行われたり、また、その疑いをかけられないように予防することが大切です。

相続が発生したら、速やかに預貯金口座は凍結して、不正な出金を防いだり、
遺産分割前に立て替えた費用がある場合は、領収書を残しておくなど、
適切な対応が必要です。

さらに、相続は法律や税金だけの問題ではありません。
親族間の感情の問題も絡み合います。
あらぬ不正を疑われ、争いに発展することのないよう十分に気を付けたいものです。


いかがでしたでしょうか?
この記事を読んでくださる皆様のお役に立てたならば幸いです。

今回も最後まで読んでいただき、有難うございました。


へいわ法務司法書士事務所
司法書士 山内勇輝

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